2025/5/12
建築CG制作の現場に浸透するAI技術

建築業界では今、AI技術の進化が実務のあらゆる場面に影響を与えはじめています。
中でも建築CG制作の現場では、教育・研修から日々の作業効率化、ツールの操作サポートに至るまで、AIの活用が急速に広がっています。
これまで時間と経験が必要だった専門的な業務も、AIの導入によって「誰でも、より早く、高品質に」こなせる時代へ。
本記事では、現場で実際に使われているAI活用事例や、主要ツールに組み込まれた最新機能、そしてWebベースで進化する制作スタイルまで、建築CGとAIの今をわかりやすく紹介していきます。
AIが変える建築CG制作の「学び」と「育成」

これまで建築CG制作に必要なスキルは、現場で経験を積みながら時間をかけて習得するのが一般的でした。
ですが今では、AI技術を取り入れた学習環境が広がり、初心者でも効率よくスキルを身につけられる時代になっています。
例えば、
● 生成AIで自動作成されたチュートリアル動画
● 対話形式で学べる教材
などが登場し、専門知識がなくても実践的な学びが可能になっています。
一方で、現場の実務支援においてもAIの導入が進んでいます。
たとえば鹿島建設が導入した「K-SAFE」。
過去の事故データや作業環境をAIが分析し、危険要素を事前に検出することで安全管理を支援するツールです。これは直接的な教育システムではないものの、日常的な実務の中で安全意識を高めるきっかけになっており、OJTの一部としても効果を発揮しています。
このように、AIは作業効率だけでなく、人材の育成や安全意識の定着にも広く貢献しており、「AIと共に成長する」新しい学びの形が定着しつつあります。
FAQ対応にもAI活用、制作現場を下支え

建築CG制作の現場では、ツールの操作方法や設定ミス、素材の扱いなど、日々のちょっとした疑問が作業の手を止める原因になることがあります。こうした「細かい困りごと」への対応も、今ではAIが担う時代になっています。
社内ナレッジを検索・共有できるAIチャットボット
東洋建設では、社内に散在していた設計図面やマニュアル、技術資料をAIチャットボットに集約し、自然文で検索・回答できる仕組みを導入しています。(参照:Google Cloud の生成 AI を使ったチャットボットの構築で社内ナレッジの活用を目指す)
これにより、資料を探す手間が大幅に削減され、必要な情報にすぐアクセス可能に。建築CG制作でも、過去の設計意図やプロジェクト事例を短時間で把握できるため、パース制作の質とスピードの向上に貢献しています。
CG制作ツールのFAQにも即時対応
D5 Render や BIMソフトなど、建築CG制作に使われるツールの操作に関する質問にも、AIがリアルタイムで対応するケースが増えています。たとえば、ライティングの設定方法やレンダリングエラーの対処法といった技術的なトラブルも、AIがチャット形式で即時回答。
これにより、制作現場の手が止まる時間を減らし、効率的なワークフローが実現されています。
こうしたFAQ対応やナレッジ検索は、直接的にCGを制作する機能ではありませんが、制作の現場を支えるインフラとして重要な役割を果たしています。担当者への問い合わせが減ることで業務負担も軽くなり、全体のスピードと品質の底上げにもつながっています。
制作工程そのものを効率化するAI技術

建築CG制作におけるモデリング、レンダリング、マテリアル設定といった中核的な工程は、時間も技術も求められる作業です。しかし、ここにもAI技術が本格的に導入され、作業の流れが大きく変わり始めています。
かつては経験や感覚に頼っていた部分が、AIの支援によって誰でも効率よく、高品質な成果を出せるようになってきました。
テキストや画像から空間を自動生成
マテリアル設定や背景の演出も、AIによって効率化が進んでいます。たとえば「明るい木目の床」「夕方の自然光」といったテキストや画像をもとに、質感や照明環境を自動で反映する生成ツールが登場。

制作の繰り返し作業を軽減し、制作者が本来集中すべき“表現の工夫”に時間を使えるようになっています。
「誰でもプロ並み」のCGパース
注目されているのが、AI自動レンダリングサービス「MyRenderer」です。
BIMソフトで作成した3Dモデルをアップロードするだけで、AIが構図やライティング、エフェクトを最適化し、高品質なパースを自動生成します。CG制作に不慣れな人でもプロ並みのビジュアルが短時間で完成するため、社内プレゼンや顧客提案の場面で活用が進んでいます。

このように近年では、ラフスケッチや簡易モデルをAIが読み取り、詳細なパース画像に仕上げる技術も実用化が進んでいます。アイデアを即ビジュアルに変換できることで、クライアントとの打ち合わせや企画段階でのやり取りがよりスピーディに。企画から制作までの距離がぐっと縮まっています。
主要ツールに組み込まれるAIサポート機能
特に「D5 Render」「SketchUp」「ArchiCAD」といったソフトウェアでは、AIがユーザーの操作をリアルタイムでサポートし、より直感的でスムーズな制作環境を提供しています。

D5 Render
「D5 Render」に搭載されたAIベースの画像エンハンス機能「Post-Ai」。
レンダリング後の画像に対して、照明やマテリアル、キャラクター、乗り物、植物などのディテールを自動的に最適化し、より高品質なビジュアルを実現します。これにより、作業者は細かな調整に時間を取られることなく、創造的な部分に集中できます。
【公式HPはこちら】
SketchUp
「SketchUp」のAI拡張機能「Diffusion」は、設計意図を文章で入力するだけで、リアルなパース画像を自動生成する機能を提供しています。
ーザーは、簡単なモデルに対して「明るい雰囲気」や「コンクリート打ち放し」といったプロンプトを入力することで、数秒で複数のレンダリングパターンを得ることができます。これにより、プレゼン資料の準備やアイデアスケッチのスピードが格段に向上します。
【公式HPはこちら】
ArchiCAD
「ArchiCAD」では、AIを活用したビジュアライザーアドオンが提供されています。
これは、シンプルなボリュームモデルをもとに、テキスト入力から3Dの空間イメージを自動生成する機能で、建築の初期構想段階での視覚化を大きく後押ししています。パースモデルを迅速かつ簡単に実現できます。
【公式HPはこちら】
このように、普段使っているツールにAIが自然と組み込まれることで、ユーザーは特別な学習や操作をせずとも、スムーズに機能を活用できるようになっています。作業を補助する存在として、AIはますます身近で頼れるツールになりつつあります。
AIエンジン搭載のWebサービスの一般化

建築CG制作の現場では、AI技術を搭載したWebサービスの一般化が進んでいます。
これにより、ソフトウェアのインストールが不要で、場所やデバイスを問わず高品質な建築CG制作が可能になっています。
たとえば、株式会社Lib WorkとMaket Technologies Inc.が共同で開発を進める「住宅設計の自動化プロジェクト」では、AIが建築基準や土地の形状、顧客の要望に適した最適な間取りを瞬時に生成。さらに、生成した間取りを基にフォトリアルな3Dパースモデルを自動で作成することで、設計プロセスの効率化と提案力の向上が期待されています。
また、クラウドベースのインテリアデザインツール「Coohom」は、図面から3D空間を生成し、家具の配置やマテリアルの割り当て、レンダリングまでをワンストップで自動化します。ブラウザ上で動作するため、インストール不要で、PC、タブレット、スマートフォンなど複数のデバイスからアクセスでき、リモートワークや柔軟な働き方に対応しています。
このように、AIエンジンを搭載したWebサービスは、建築CG制作のスタイルを大きく変えつつあります。場所や時間の制限を乗り越え、より柔軟で効率的な制作環境を実現するための強力なツールとして、今後ますますの活用が期待されます。
建築CG制作の相談はアクアクリエイティブラボへ
AIの進化によって、建築CG制作はかつてないスピードと柔軟性を手に入れつつあります。
学習、作業、サポートの各フェーズでAIが関わることで、制作の質も精度も飛躍的に向上。今後は「AIと共に創ること」が、建築ビジュアライゼーションの当たり前になるでしょう。
私たちアクアクリエイティブラボでも、こうしたAI技術を積極的に取り入れ、高品質かつ短納期の建築CG制作を実現しています。用途に応じた最適な制作フローのご提案から、実務レベルでのAI活用支援まで、幅広く対応可能です。是非とも アクアクリエィティブラボ にご相談ください。
お問い合わせ先:
東京オフィス、名古屋オフィス
林:t.hayashi@aqua-c-lab.com
ご相談ベースで構いません、お気軽にお問い合わせください!!
Blog
建築CG制作のプロが実験!画像生成AIを使ったファサードデザインのイメージ生成
ChatGPTやGeminiをはじめ、生成AIを日常的に使用しているビジネスマンも多いと思います。私たちが普段から関わっている建築業界でも生成AIは活用されており、特にデザイン検討やパースイメージの画
2024.09.01
Blog
【オリジナル作品 第4弾 -COEXIST- by D5RENDER】Vol.1 作品づくりの裏側
本ブログでは、オリジナル作品第4弾として「COEXIST -LIVE WITH NATURE AND GREENERY IN THE CONCRETE JUNGLE-」の制作に関する舞台裏などを担当し
2024.10.25
関連ページ